無尾翼模型飛行機向け翼型の選択肢

2024年1月3日

無尾翼(Flying Wings)の模型飛行機を作りたい時に翼型はどんなものを選択すればいいか考えてみました。特に滑空比がよく浮の良いグライダーを作ることを目標とします。

必要要件は下記としました。

  • 低レイノルズ数でも使用できる(模型に適している)
  • 回転モーメントCmが小さいこと(安定している)
  • L/Dがよいこと(遠くまで飛べる)
  • MaxCLが高いこと(ゆっくりとべる)

ネット情報から、上記の条件に合致し、一般的に模型の無尾翼グライダーに使われている翼型を探しました。

MH(Martin Hepperle)系
・MH 60, t/c = 10.08%
・MH 44, t/c = 9.66%

EPPLER系
・EPPLER 337 AIRFOIL – Eppler E337 flying wing airfoil
・EPPLER 635 AIRFOIL – Eppler E635 airfoil

Liebeck系
・LA2573A – Liebeck LA2573A airfoil

FX系
・FX 77-W-121 (fx77w121)

その他
・RAF 33 AIRFOIL – RAF-33 airfoil

ざっとネットで調べたところ、以上のような翼型が使われているようでした。

下記にその特徴をまとめます。

MH(Martin Hepperle)系

Martin Hepperle マルティン・ヘッパール氏が開発した翼型です。
彼は、模型、ハンググライダー、パラグライダー、風力発電機用と多数の翼型を開発しているエンジニアのようです。

彼の開発した翼型の内、無尾翼に適していると思われる翼型が下記です。
(参考サイト:Aerodynamics of Model Aircraft

MH(Martin Hepperle)系
・ MH 60, t/c = 10.08%
・ MH 61, t/c = 10.28%
・ MH 62, t/c = 9.30%
・ MH 64, t/c = 8.61%

・ MH 42, t/c = 8.94%
・ MH 43, t/c = 8.50%
・ MH 44, t/c = 9.66%
・ MH 45, t/c = 9.85%
・ MH 46, t/c = 11.39%
・ MH 49, t/c = 10.50%

これらの翼型は、高性能な無尾翼模型機を作るために開発サれたそうで、次の項目が目標だそうです。

・ F3B機で使用されている翼型に匹敵する抵抗力の達成、
・ 回転モーメント Cm(c/4) が小さいこと
・ 最大揚力係数が高いこと

MH 60 と MH45 はほぼ同じ翼型に見えます。彼のサイトによると、MH45系はレイノルズ数 200,000 以下でよく働くそうです。ただ、形状がほぼ同じなので、模型サイズで違いを再現するのは難しそうです。
(つまりどっちでも良さそう。)

模型サイズでは、レイノルズ数は実機に比べて極めて引くいです。
Re = 5m/s * 200mm * 70 = 70,000
この翼型は、低レイノルズ数でも性能が高いです。Re = 50,000 でも、Cl = 1.5 、L/D = 25 、Cm = 0 @10deg と十分な性能が出るようです。他のS時キャンバの翼型では考えにくい高性能ですね。

この翼型は、世界最強の無尾翼DLG に適した翼型第一候補になりそうです。

ちなみに、ハンググライダー用に開発された翼型もあります。
ハンググライダー用
MH 78, t/c = 14.4%
この翼型は、安定性が高く、翼厚が分厚く構造的に有利です。しかし、低レイノルズ数での性能がよくないです。
MaxCl だけを見ても、R = 100,000 では、MH60 の方が良い。
(R = 500,000 まで高まると、HM78の方が良くなってきます。)
また、翼型の先端部の形状が複雑で、最小半径が小さく模型では再現でできなさそうです。
これらの情報は マルティン・ヘッパール氏のサイト を出典を得ています。このような情報を公開されていることに感謝致します。

EPPLER系

EPPLER系翼型は、Dr. Richard Eppler リチャード・エプラー博士の開発した翼型。彼は、1950年台に世界初のFRP製グライダーを開発したメンバーの一人です。

彼の開発した翼型の中で無尾翼機に適していると思われるのは下記の翼型です。近い番号の翼型でS字キャンバー翼型はたくさんあり、きりがないので、6つだけ選んでみ見ました。

EPPLER系
・ Eppler E333
・ Eppler E334
・ Eppler E337
・ Eppler E636
・ Eppler E637
・ Eppler E638

Eppler 330台の翼型は、無尾翼模型機用に設計されたようです。中でも特に Eppler 334 はよく無尾翼模型機に使われています。

Eppler 334 解析してみたところ、Re = 200,000 を超えないと性能が出ないようです。
ただ、一旦超えると最大揚力係数は Cl = 1.4 以上出るので、低速飛行に向いているかもしれません。
モーメントは、Cm = -0.03 くらいで、安定性は今一つです。
Re = 200,000 で、Cl = 1.2 、 L/D = 40 、 Cm = -0.01 @ 10deg
大きめの捩り下げが必要になると思います。

普通のキャンバー翼型に性能が似ています。捩り下げで安定性を確保する形になると思うので、翼型のL/Dは高いが、機体全体としては捩り下げによる抗力増加があり、どちらが有利かバランス次第です。

捩り下げ最適化する前提で設計すればありかもしれません。

LIEBECK系

Robert H. Liebeck ロバート・リーベック氏が設計した翼型。
彼は、アメリカ人でボーイングの社員でした。blended wing bodyプロジェクト(全翼機)のリーダーだったそうです。

彼の開発した翼型の中で無尾翼機に適していると思われるのは下記の翼型です。

LIEBECK系
・Liebeck2573A (la2573a)

Max thickness 13.7% at 28.8% chord.
Max camber 3.2% at 26.1% chord

これもたまに無尾翼模型機に使われているようです。
鳥人間コンテストに出場する無尾翼飛行機にも使われていたことがあります。

早速解析してみると。
Re = 200,000 以下が弱いようです。
Re = 200,000 位上なら Max Cl = 1.3 程。
Cm はほぼ0のようで安定性はまぁまぁ。

MH60 と EPLLER334 の間のような性能でした。

RAF33

この翼型は出処不明です。

Max thickness 12.6% at 30% chord.
Max camber 4.7% at 30% chord

Re = 100,000 くらいから使えそうです。
比較的、低レイノルズ数で粘ってくれそう。
ただ、Cmはマイナス気味なので、捩り下げは必須となりそうです。

以上、無尾翼模型飛行機で使用できそうな翼型の情報をまとめていました。
選定には下記のサイトを使用させていただきました。

Airfoil data information (airfoiltools.com)

模型飛行機

Posted by Takuma