無尾翼模型飛行機向け翼型の比較(MH,LA,E)

2024年1月3日

前回の記事で、無尾翼(Flying Wings)に適した翼型の候補をリストアップしました。

↓前回記事

必要要件は下記として探しました。

  • 低レイノルズ数でも使用できる(模型に適している)
  • 回転モーメントCmが小さいこと(安定している)
  • L/Dがよいこと(遠くまで飛べる)
  • MaxCLが高いこと(ゆっくりとべる)

翼型の性能比較

今回は上記で見つけた翼型の中から本命になりそうな翼型を選び性能比較をしてみました。
選択した本命翼型候補は下記です。

・ EPPLER 334
・ LA2573A
・ MH 60

まずは形状を重ねてみた。ここから下記のことが分かりました。
LA2573A と E334 は前半分上面の形状が似ていますが、下面と後半の形状が異なっています。
LA2573A はTOPの下部に高い曲率変化を持っています。
  →模型で再現しにくい
  →TOPの形状がMH78に似ている
MH60のTOPは3翼型で一番尖っていいます。
  →模型で再現しやすそう
LA2573A は下面の張り出しと上面後半の絞りで 一番S字キャンバー傾向が強いです。

次に Re = 50,000 で解析してみた。翼弦長 140mm で 5m/s で大体 Re=50,000 ですので、模型飛行機を考える上では基準となるレイノルズ数だと思います。

Re = 5m/s * 140mm * 70 = 49,000

これだけ低いレイノルズ数だと解析結果がどこまで使用できるかわかりませんが、ある程度の傾向は読めると思います。

下記積結果から、下記のことが分かります。
・L/D は MH60 がダントツによい
・E334 と LA2573A のMaxCl はα=20以上にあるから信頼性低い?
・MaxCL は LA5273A がよい(L/Dが悪すぎるが)

この結果を信用すると、模型サイズの低レイノルズ数でいい感じに使えそうな翼型はMH60のみです。
模型用に設計された翼型はこれだけなので当然の結果になりました。

MH系翼型の詳細比較

上記の結果から、無尾翼模型飛行機用としてはMH40、HM60系の翼型が適していそうなので、MH40、HM60シリーズの中での詳細比較を実施してみました。

比較ししたのは下記の翼型です。

MH(Martin Hepperle)系
・ MH 42, t/c = 8.94%
・ MH 43, t/c = 8.50%
・ MH 44, t/c = 9.66%
・ MH 45, t/c = 9.85%
・ MH 46, t/c = 11.39%
・ MH 49, t/c = 10.50%

・ MH 60, t/c = 10.08%
・ MH 61, t/c = 10.28%
・ MH 62, t/c = 9.30%
・ MH 64, t/c = 8.61%

これらの翼型を Re = 50,000 の条件で解析してみました。(解析ソフト:XFLR5)

この解析結果も、レイノルズ数が低いために大体の傾向しかあてにならないと思われますが、一旦解析値を辛勝してみます。特にMH42,43,61 に着目しました。

L/D は MH43 がトップ
Cm は MH61 がトップ
MaxCl は MH42 がトップ

とそれぞれ若干特徴に違いがあることが分かります。

MH43 は一番薄いのでL/Dが一番良い。
MH61 は一番分厚いし、キャンバのS字傾向が強いのでCmが高く(安定性高)でMaxCLが低い。
MH42 はMH43 よりは分厚く、MH61 よりS字キャンバ傾向が弱いので、MaxCLが高い。

翼型の形状から考えても、結果は納得できるものとなっています。

さて、どの翼型を選ぶのが良いでしょうか?

MH42,43 はMaxCL や L/D は良いが、Cmが負でです。
静的安定性を確保するためには重心位置を MAC25% より前に設定する必要がありますが、
その状態でバランスを取ろうとすると、「後退角+ねじり下げ」 もしくは 「エレボンでUPに切る」どちらかが必要となります。
その結果、結局はMaxCL や L/D が犠牲となるので、MaxCL と L/D が 5% 良いだけなら、相殺される可能性が高いと思います。

なので、無尾翼の模型飛行機用としては MH61 が一番使いやすそうです。

↓無尾翼用の翼型の比較に関しては下記サイトも参考にさせていた来ました。
Airfoil Database for Tailless and Flying Wings (aerodesign.de)

模型飛行機

Posted by Takuma